團十郎 紫綬褒章を受章
市川團十郎が、平成19年度春の褒章で紫綬褒章を受章されることになり、歌舞伎座で記者会見を行いました。
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「思いもよらず、立派な賞をいただくことになり、今年は“ついているかな”と感じています。パリ・オペラ座(ガルニエ)で、歌舞伎をはじめて上演させていただき、また、九代目團十郎が天覧歌舞伎を催した同じ場所で、同じく天覧歌舞伎で弁慶を勤めさせていただき、また、今回このような立派な賞をいただけるという、大変ありがたい事だと思っています。
市川家という、先祖の御威光があっていただけたのだと思っています。また、昨年、白血病の治療も無事に終え、フランスから帰国後にあらためて検査を受けましたけれど、何の異常もないということで、本当にありがたい事、幸せな事が一杯で、この幸せを大事にしたい、そう思っています。」
紫綬褒章について―――
「学問・芸術方面で研鑚した方々がいただける賞とうかがっておりまして、私もそういう方々の仲間入りをさせていただいていいのかなぁ、なんて、そういう正直な思いはいたしました。
おかげさまでフランスでは、コマンドゥールという、これもやっぱり芸術に関する賞をいただき、褒美ばっかり多いので、どうしたらいいのかな、とも思っております。」
歌舞伎俳優として―――
「おかげさまで、歌舞伎は一時期より、皆さまに楽しんでいただき、親しみを持って下さる方が増えていると思います。
これからはさらに、日本人として誇りをもって、歌舞伎を発展させたいし、世界にも示したいと思っております。そういう気持ちに、今回の受章は本当に良い援護射撃をして下さったのではないのかと思っています。
歌舞伎、そして日本の伝統・江戸文化、それらをもう一度世に問うのが私の役目だと思って、なお、いっそうがんばりたいと思っております。」
十二代目襲名から今までの道のり、今後について―――
「團十郎という名前を襲名させていただいてから、激震の20年であったな、ということを痛切に感じます。
我々の世代は人数も多く、次の世代、さらに息子たちの世代もそれぞれ頑張り、本当に歌舞伎にとっていい形が生まれつつあると思っております。
日本人が作ってきた文化、その上で今、歌舞伎がおかげさまで繁栄を迎えておりますけれど、その底を支える日本の文化が弱くなっている、というのが現実だと思います。ですから、若い人たちにも、弱くなっている日本の文化の部分をしっかり見据えて、気を配りながらがんばってもらいたい。そういう風に思っています。
おかげさまで、フランスから帰ってきた時点での検査でも、異常がなく、後一年全く異常がなければ、ほとんど完治という事になると思うので、その時は尚一層馬力をかけて、舞台を勤め、僭越ですけれど、そういう啓蒙という事も心がけて突進していきたいなと思っております。」
今後の目標―――
「私どもの先祖の五代目團十郎も書いていますが、とにかく座っているだけで良いという役者になる、ということだと思います。
役者にとって、存在感というものが、本当に大事なものだと思っておりますので、ぜひ、今後とも存在感のある役者になるように努力したいなと思ってます。」
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歌舞伎座「 團菊祭五月大歌舞伎」では、『勧進帳』『神明恵和合取組』に出演する團十郎丈。ますますのご活躍が楽しみです。