パリ・オペラ座 記者会見
3月23日~30日、パリ オペラ座(ガルニエ)にて、「パリオペラ座松竹大歌舞伎」が行われます。 公演を控え、2月27日、團十郎、段四郎、亀治郎、海老蔵が出席し、記者会見が行われました。
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演目は、團十郎・海老蔵が、弁慶と富樫ダブルキャストをつとめる歌舞伎十八番の内『勧進帳』。続いて、團十郎が“にらみ”を披露する『口上』。そして、新歌舞伎十八番の内『紅葉狩』。
市川家一門を中心とした、パリ・オペラ座公演。歌舞伎の歴史にとっても初めての大変意義のある公演になります。
市川團十郎―――
オペラ座ガルニエでの公演は、歌舞伎の歴史にとって、また、市川家にとっても、大変大きな出来事だと思っております。2004年のシャイヨー宮での海老蔵襲名を機に、このような機会を得ることが出来ましたことは、本当に嬉しい事でございます。
海外の歌舞伎公演では、通常花道を特設しますが、今回のガルニエの舞台では設置いたしません。ガルニエの持ってる重厚感に対して、仮設の花道がいかがなものかと、検討した結果です。また、今回はガルニエのオーケストラボックスに床を作り、そこに舞台を作ります。今までの海外の公演では、オーケストラボックスの後ろでお芝居をしていましたから、今回は、前でお芝居が出来るということになりました。
花道が無いので『勧進帳』の六方の引込みなど、日本でやらせていただくのとは違うところもありますが、根本的には、日本で上演されているまま。大上段な言い方ではございますが、日本の文化を背負って、パリのガルニエに乗り込むという気概で舞台を勤めたいと思っております。
市川海老蔵―――
日本の文化の美しさ、力強さをパリに伝えたい。シャイヨー宮に出る前からパリで舞台がしたかったし、オペラ座にも出るつもりでいました。
気負いは無いけれど、とても大きな事ですし、歌舞伎の歴史上初めての事。これが現実になったというのは、非常に有難いことです。
そして、歌舞伎が素晴らしいという事を、もっともっと世界に伝えたい。本当は一番歌舞伎を判ってもらいたい日本の方々に、逆輸入のように海外から伝えたいと考えていたので、それがこのように具体的になってきて本当に嬉しい。
市川亀治郎―――
東京、ニューヨーク、イギリス、ラスベガスと、数々のオペラ座に参りましたが…これは全てフェイクで、『オペラ座の怪人』を見に行っただけでございます(笑)。今回、本当のオペラ座に行けること、大変よろこんでおります。
フランスだから特別にどうしようというのではなく、日本のお客様にお見せするのと変わらず、真摯な気持ちで勤めることが、きっと、日本の文化のためにもなると思います。市川ファミリーで団結力を持ち、歌舞伎界の代表、日本の代表として、使命を立派に果たしてまいる所存でございます。
市川段四郎―――
今まで、2度ほどパリで公演したことがございますが、この度は憧れておりました、世界屈指のオペラ座ガルニエで、公演をさせていただけますこと、誠に光栄に思っております。
フランスも素晴らしい芸術文化を持った国でございまして、日本にもこのように素晴らしい歌舞伎という伝統芸術があり、美意識や演出の発想、そして、お芝居・踊りなど色々なジャンルがある、ということをフランスの方々に理解していただいて、喜んでいただければ幸いだと思っております。
オペラ座ガルニエは、中をちょっと見学しましたが、とても素晴らしい劇場でございます。今回出演させていただくことは、生涯の土産になるような(笑)、と思っております。まだまだ、長生きするつもりではおりますけれど、大変光栄です。
パリオペラ座の印象と、日本での公演との違いについて---
團十郎―――
ガルニエの舞台の真後ろには、周りが全て鏡になっている稽古場があって、歴代のプリマドンナの絵が飾ってあります。今までオペラ座を支えてきた方々の、努力や思いがそこに凝縮されているような雰囲気があって、身の引き締まる感じがいたしました。
『勧進帳』の六方での引込みの他に、日本での公演と違うのは、通常、布(きれ)に描いている「松羽目」を、今回は全て檜の板に松を描いてもらいました。木で周りを囲んだ、能舞台に近い形です。
それから照明も、オペラ座の天井のシャガールの絵と、有名なシャンデリアを考慮したり、『勧進帳』と『紅葉狩』では、照明を少し変えて違いを際立たせたり、などと考えてみたりしております。ただ、これはあくまでプランなので、現地に行って皆さんと検討してから決めたいと思っています。
『口上』はフランス語でやらせていただきます。 “にらみ”の前には、「これをご覧頂くと一年間風邪をひかないといわれてます」と、ちゃんとフランス語で入れる予定でございます。
通じるかどうかは判りませんが(笑)
弁慶・富樫のダブルキャストについて---
團十郎―――
まさに親子対決だと思います。親子といえども舞台の上に立てば役者同志。親子の思いと火花がうまく散れれば良いと思っています。
これは策してやれることではありませんが、親子で対決しながら、そこに親子の情が残っているような『勧進帳』が表現できればと考えております。
海老蔵―――
日本では親子ということを皆さんご存知だろうけど、パリでは親子というよりは一人のアクターとして見られるほうが強い訳ですから、どういうふうな腹のすえ方して舞台を勤めるか、これから考えていきます。
でも、僕が弁慶をして父が富樫を勤めるなんて考えてもいなかったですね。まず無いなと思っていたんですけど、非常に楽しみですね。
亀治郎さんは、大河ドラマで少し歌舞伎の世界を離れていますが---
亀治郎―――
僕はテレビをやっていても、歌舞伎をやっても、気持ち的には全く変わらず一生懸命やっているつもりなんです。
ただどうしても、お白粉塗りたい病が(笑)…
そういう意味で、ちょうどテレビの撮影が始まってから半年ぐらい経つので、この時期にオペラ座の公演に入れて、気分的にもベストタイミングで舞台に出られます。
また、このオペラ座がある事で、後の撮影も非常にいい気分で取り組めるので、大変ありがたく思っています。
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芸術の都パリで『勧進帳』が上演されるのは、今回が初めて。また、歌舞伎の代表な三味線音楽、義太夫・常磐津・長唄それぞれの違った面白さ、音楽の妙を楽しめる『紅葉狩』。
歌舞伎の歴史にとって大変意義のある、この「パリオペラ座松竹大歌舞伎」。今年、最も注目される公演の一つといえます。
■公演日程(5回公演)
2007年3月
23日(金) 19時30分開演
25日(日) 14時30分開演
27日(火) 19時30分開演
29日(木) 19時30分開演
30日(金) 19時30分開演
パリ オペラ座(ガルニエ)
■助成
文化庁
■後援(50音順)
LVJグループ株式会社 ルイ・ヴィトン ジャパン カンパニー
KDDI株式会社
ダイキン工業株式会社
大和証券グループ
■製作
松竹株式会社
■演目と主な配役
歌舞伎十八番の内『勧進帳』
武蔵坊弁慶 | 市 川 | 團十郎 | (23日、27日、30日) | |
市 川 | 海老蔵 | (25日、29日) | ||
(Wキャスト) | ||||
富樫左衛門 | 市 川 | 海老蔵 | (23日、27日、30日) | |
市 川 | 團十郎 | (25日、29日) | ||
(Wキャスト) | ||||
源義経 | 市 川 | 亀治郎 | ||
亀井六郎 | 市 川 | 右之助 | ||
片岡八郎 | 河原崎 | 権十郎 | ||
駿河次郎 | 片 岡 | 市 蔵 | ||
常陸坊海尊 | 市 川 | 段四郎 |
『口上』
市 川 | 團十郎 |
市 川 | 海老蔵 |
市 川 | 亀治郎 |
中 村 | 梅 枝 |
上 村 | 吉 弥 |
片 岡 | 市 蔵 |
河原崎 | 権十郎 |
市 川 | 右之助 |
市 川 | 段四郎 |
新歌舞伎十八番の内『紅葉狩』
更科姫実は戸隠山の鬼女 | 市 川 | 海老蔵 | |
余吾将軍平維茂 | 市 川 | 團十郎 | |
山神 | 市 川 | 亀治郎 | |
従者右源太 | 河原崎 | 権十郎 | |
従者左源太 | 市 川 | 右之助 | |
腰元岩橋 | 片 岡 | 市 蔵 | |
侍女野菊 | 中 村 | 梅 枝 | |
局田毎 | 上 村 | 吉 弥 |